新潟大学

センターについて

センターの概要

朱鷺

 2008年9月25日,27年ぶりに佐渡島の大空に10羽のトキが羽ばたき,トキの野生復帰が大きな一歩を踏み出しました。それに呼応し同年12月,新潟大学にトキをシンボルとした総合的な自然,地域再生に関するプロジェクト『新潟大学超域朱鷺プロジェクト』が立ち上がりました。さらにはその活動を発展,盤石とするため,2010年4月佐渡市に『朱鷺・自然再生学研究センター』が開所しました。『超域朱鷺プロジェクト』の終了にともない,同センターは2014年1月に超域学術院から独立し研究推進機構の組織として再出発しました。

朱鷺・自然再生学研究センターの目標

 私たちは大気・水・食料などの生命基盤,地域の風土・文化,そして安全な暮らしを自然の恩恵,すなわち生態系サービスに依存しています。生態系サービスは,生態系の構造と機能をつかさどる生物多様性に支えられています。しかし,人間による生息地の破壊や乱獲は,トキなど多くの野生生物を絶滅させてきました。また,人口減少・高齢化による地域産業構造の変化は,里地里山を荒廃させて,生物多様性を減少させています。そのため,持続可能な社会,生活を維持していくためには,生物多様性の保全を核とした,劣化した生態系の構造と機能を復元,回復する自然再生が必要不可欠です。

 新潟大学は,野生絶滅したトキの野生復帰という世界的に注目されている事業の現場に立地する地元大学として,地域の自然再生を支援していくことを強く期待されています。里地里山の自然再生には,開発で失われた里山の自然環境の復元,里山に入り込んだ外来生物の駆除,農地の荒廃と狩猟圧の減少で顕在化した鳥獣害により劣化した生態系,および,自然と共存可能な地域社会の復元も含まれています。まず,佐渡のシンボルであるトキの再導入生物学を確立し,生物多様性の成り立ちを遺伝子,種,個体群,群集,生態系,景観の様々なレベルから解明し,生態系の復元手法を明確にし,地域社会が自然再生を受け入れ,トキと共存するための共生社会を提案する,“佐渡モデル”の確立を目指しています。次に,この"佐渡モデル"を日本国内や東アジア地域へ適用するために拡張・一般化することで,普遍的な「自然再生学」として体系化することを目指します。将来的には,稲作を主体とした農耕地からなる里山景観をもつアジア地域の大学・研究機関と連携し研究を進めることで,この中心的な「自然再生学」の教育・研究拠点となることを目指しています。

 自然再生の実現には,実践的研究活動を通し,自然科学を横断し,人文・社会科学とも融合した学際的環境科学で対応しなければなりません。そのため,自然再生学には,理・工・農学を中心とした自然科学と,地域社会が自然再生を受け入れるための合意形成や社会システムの提案などの人文・社会学を融合させることが必要となります。当センターは,文理融合の学際的・超学的研究体制のもとで,地域の生物多様性の実態を解明し,地域に密着した自然再生手法を提案しながら,自然との共存が可能な社会システムを模索し,自然科学と人文・社会科学が融合した学際的環境科学の構築をめざします。

朱鷺・自然再生学研究センターの研究体制

 センターは,センター長の下に,再導入生物学研究部門,生物多様性・生態系復元研究部門,環境社会システム研究部門の3つの研究部門で構成されています。

 再導入生物学研究部門は,飼育下および再導入されたトキを材料として,遺伝学,生理学,行動学,生態学に関する基礎生物学的研究を行い,トキの再導入の成功率を高める技術手法を明らかにし,トキの野生復帰に貢献するトキの再導入生物学の確立を目指します。

 生物多様性・生態系復元研究部門は,生物多様性の現状を解明し,自然再生手法を探る生物多様性サブ研究部門と,景観レベルで生態系を復元・管理する手法を研究する生態系管理復元サブ研究部門から構成されます。生物多様性サブ研究部門は,里地里山の生物多様性の現状を把握し,生物多様性の減少要因を解明し,生物多様性の維持に最適な環境保全型農業等,保全手法を明らかにします。生態系管理復元サブ研究部門は,里地里山の現状と,その生物多様性を生態系・景観レベルで解析し,里地里山の自然再生のために復元すべき場所のデザインを提案し,地域の生態系の復元手法を研究します。

 環境社会システム研究部門は,地域の生物多様性に配慮しながら,持続的に維持可能な地域社会システム構築の実践的研究を行い,自然資源を賢く利用できる持続可能な地域社会システムに関する研究を行う。また,センターの研究成果を地域に還元する環境教育を行うことで,持続可能な地域社会システムの構築についての実践的な研究を行います。

 センターは,佐渡市新穂潟上のトキ交流会館2階と新潟大学五十嵐キャンパスの2カ所にあります。センターの研究業務を支援する事務部も五十嵐キャンパスと佐渡事務所に配置され,キセン城や潟上実験水田などの教育研究フィールドをとして維持するための技術職員が佐渡事務所に配置されています。
 

教育研究フィールド

 新穂キセン城地区は,小佐渡東部山中に位置する広大な放棄棚田です。隣接する清水平や生椿とともに野生絶滅前のトキの主要な生息場所でした。長年にわたり山麓からの出づくりで耕作されていましたが,1970年代初頭の利用放棄により森林への遷移が急速に進行し,水辺景観やトキの採餌環境はほとんど失われてしまいました。
 新潟大学では,地権者の方々,環境NPO,民間企業各社の協力を得て2002年度からキセン城地区において水辺環境の復元と生物多様性の回復を目的とした自然再生事業を行い,これまでに約140枚の棚田(30ha)をビオトープとして整備してきました。
 このキセン城地区は,自然再生のための技術開発,ビオトープ維持管理技術者の人材育成,絶滅危惧動植物の保全手法の開発のための研究教育の場として,また,長期的な生物多様性モニタリングの研究フィールドとして位置づけています。このほかにも,新穂潟上地区に環境保全型農業の実践研究のための実験ほ場「潟上実験水田」があります。

キセン城・水キセン城・雪キセン城・花

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